スティーブ・ジョブズ
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文:Ina Fried(CNET News) 翻訳校正:川村インターナショナル2010年6月4日 11時38分
カリフォルニア州ランチョ・パロス・ベルデス発--Steve Jobs氏は当地で開催のD: All Things Digital(D8)カンファレンスで、最新の「iPhone」をさっと取り出すこともなければ、次に「i」がつくカテゴリがどれかを教えてくれることもなかった。しかし、Jobs氏の発言からは、この象徴的な最高経営責任者(CEO)が業界の方向性をどう考えているのかを垣間見ることができた。
Jobs氏は米国時間6月1日、D8カンファレンスで1時間半にわたって語った。その中で同氏は、いずれ従来型のコンピュータを必要とする人はわずかに数人に1人になると述べている。
「例えば、この国が農業国だったころは、車はすべてトラックだった。農場で必要なものだったからだ」と同氏は言う。都市部が広がるにつれて乗用車が普及し、さらにパワーステアリングやオートマチックトランスミッションが広まった。
Jobs氏は、「PCはトラックのようなものになるだろう」と述べる。同氏は、「PCはすぐにはなくならない」と考えるが、「PCを必要とする人は何人かに1人」だけになるとしている。
Jobs氏は、動画の編集やグラフィックアートの制作など、現在は従来型のコンピュータでしかできない作業が、チップやソフトウェアの進歩によって、「iPad」のようなタブレットデバイスでも可能になると述べた。
「われわれはPCを長い間使い続けてきた」ため、この動きはPCの熟練ユーザーの多くを不安にさせるだろうとJobs氏は言う。
「われわれはポストPC時代について語るのが好きだが、本当にそれが始まってみれば落ち着かないものだ」(Jobs氏)
Jobs氏は、自分がiPadのことを魔法のような製品というと今でも笑われると言い、その感覚をもっと具体的な言葉で表現しようとした。「インターネットとメディア、そしてアプリケーションとコンテンツの関係は、もっと直接的で密接なものだ。それは、中間物が取り除かれて、はぎ取られたかのようだ。『Claritin』のコマーシャルで、視界から薄い膜がはがされていく場面があるが、ちょうどそんな感じだ」(Jobs氏)
ほかにこのインタビューで明らかになったのは、Appleが実は「iPhone」より前に、iPadのようなタブレットデバイスに取り組んでいたということだ。しかしAppleは、出荷台数の点ではPC市場さえもはるかにしのぐ規模を持つ、携帯電話市場を切り崩す機会に恵まれたため、タブレットデバイスの開発を延期したという。
流出したiPhoneをめぐるGizmodoとのトラブルについてしきりに聞かれたJobs氏は、その裏側を少しだけ語った。Jobs氏はそのiPhoneが盗難された可能性があるとしている。
「バーに置き忘れられたのか、あるいはバッグから盗まれたのかという点について議論がある」(Jobs氏)
Jobs氏は、この問題全体が大きなストーリーになると認めた。同氏は「盗みは出てくる。盗品の購入はあるし、強要もある」と述べ、どこかにセックスシーンもあるもしれないと付け加えた。「このストーリーで誰か映画を作るべきだ」(Jobs氏)
Jobs氏は、AT&T、AdobeとFlash、GoogleとAppleの関係についての考えなど、さまざまな話題にも触れた。自分自身やAppleのほかの社員の日常についてさえ語っている。
AT&Tの問題
Jobs氏は、問題はあるが、AT&Tは最速の3Gネットワークを提供しているとした。品質問題は改善しつつあると考えているとしながら、もっと早く改善してくれれば良かったとも述べた。「確かに多少は問題があると思っている」(Jobs氏)
司会のWalt Mossberg氏から、米国で複数の通信業者からiPhoneを提供することにメリットがあるかと聞かれて、Jobs氏は「あるかもしれない」と答えた。
通信業者の拡大が2010年に行われる可能性については、明言を避けている。
AppleとGoogleの関係悪化
Jobs氏は「われわれと競争することを決めたのはGoogleの方だ。そして、Googleは実際にそうしている」と述べ、主に携帯電話ビジネスのことを言っていると説明した。「Chrome OS」については、「Chromeは、まだしっかりしたものになっていない」とした。
Googleとの「プラットフォーム戦争」に直面しているのかという質問には、そういう考え方はしていないと答えた。
「Microsoftとプラットフォーム戦争をしたと思ったことはない。もしかしたら、われわれが負けたのはそのせいかもしれない」とJobs氏は述べる。そうではなく、Appleはただ最高の製品を作ることに注力しているという。
Googleとの競争については、それを始めたのはGoogleであってAppleではないとしている。
「Googleはわれわれと競争することを決めたが、われわれは検索ビジネスに参入していない」(Jobs氏)
GoogleのCEOであるEric Schmidt氏から連絡があったかと聞かれると、「ない。Googleはわれわれとの競争を始めて、その競争はどんどん激しくなった」と答えた。
企業向けの販売よりも消費者市場に力を入れる理由
Job氏は「(消費者市場では)誰もが自分自身のために意思表示をする。十分な数の消費者が賛成してくれれば、われわれは朝から働くようになる」と述べた。しかし、企業ではそれほどではないと言う。企業では、製品を使う人と、どの製品を使うかを選ぶ人は同じではなく、Jobs氏によれば、購入の決定をする人々が「混乱していることがある」という。
AppleがFlashをサポートしない理由
Jobs氏は、Appleは今もまだリソースに限りがある企業であるため、衰退しつつあるテクノロジではなく「成長段階」にあるテクノロジを選択することで、そのエネルギーを集約させることにしていると述べる。
「われわれは、乗る馬を非常に慎重に選ぶことで、成功してきた」(Jobs氏)
Jobs氏は、「iMac」にフロッピードライブを搭載しなかったことなど、Appleの過去の方策に触れた。
同氏は「賢い選択をすれば、相当な手間を減らせる」と語り、Appleが単に問題ないというレベルではなく、素晴らしいものを作り出せるのはそれが理由だとした。
App Storeに関するAppleの管理が厳しすぎるか
「われわれがサポートしているプラットフォームには2種類ある。1つは、完全にオープンでコントロールされていないHTML 5だ。われわれはHTML 5をサポートしている。われわれのHTML 5へのサポートは、世界中の誰よりも優れている」(Jobs氏)
同氏は「もう1つわれわれがサポートしているのが、管理者のいるプラットフォーム、つまりApp Storeだ」と述べ、「いくつかのルールを設けている」と付け加えた。アプリケーションは、宣伝通りに機能する必要があるほか、クラッシュしてはならず、サポート外のAPIの使用は認められないと言う。それでも、アプリケーションの95%は1週間以内に承認されているとしている。
Apple社内はどうなっているのか
「Appleの社内組織は新興企業に似ている。Appleは、地球上で最大の新興企業だ」(Jobs氏)
Jobs氏によれば、Appleには委員会のような組織はなく、特定の分野を担当する従業員がいるだけだという。
「わたしは一日中、従業員のチームと会っている」とJobs氏は述べる。Walt Mossberg氏が、Appleの従業員から反論されて、間違いを指摘されたことはあるのかと聞くと、Jobs氏はそういうことはあると答えた。「われわれは素晴らしい議論をしている」と述べ、いつでも自分が議論に勝つとは限らないと語った。「一番いいアイデアが採用されなければならない。そうでなければ、優秀な従業員に残ってもらえない」(Jobs氏)
Jobs氏が信念を曲げないのはなぜか
「Gizmodoとの一件が持ち上がったとき、それには構うべきではないというアドバイスをたくさん受け取った。つまり、盗品を買って、ゆすりを働こうとしたからといって、ジャーナリストを追求すべきではないということだ」。Jobs氏はこのように述べる。しかし、最悪の事態は、もっと多くのことを見逃すようになることだという結論に至ったと同氏は言う。「それはできない。そうするくらいなら辞職した方がいい」(Jobs氏)
(wikipedia参照)