前原誠司
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枝野幸男
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原口一博
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長島昭久
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安倍晋三
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石破茂
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石原伸晃
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日本の民意を見誤る中国〜中国株式会社の研究〜その84
南魚沼産コシヒカリ 11.12(Fri)JBプレス 宮家邦彦
過去2週間に日本と北米を2度も往復してしまった。先週のワシントン出張に続き、今週はカナダのハリファックスという町だ。
北大西洋条約機構(NATO)諸国を中心に世界30数カ国の安全保障専門家が集まる国際フォーラムに呼ばれたからである。歳のせいか、時差ボケが昔よりずっと身に堪える。
欧米、中東などの政治家、政府高官、学者が出席する国際会議だったが、アジアからの参加は日韓、モンゴルなどで、中国からの出席者は1人もいなかった。
議題もNATO戦略の将来やアフガニスタンでの活動などが中心で、「中国の台頭」を正面から取り上げるセッションはない。
やはり、欧州諸国にとって中国は喫緊の「安全保障」上の問題ではないのだと痛感する。それに対し、米国からの出席者は中国の台頭を含むグローバルな安全保障問題について語ろうとしていた。
米国と欧州の専門家の間の中国に対する認識のギャップは想像以上に大きいようだ。
というわけで、欧州諸国の「中国観」の変化に関心を持って参加した筆者の期待は見事に裏切られた。
だが、その会議出席中にiPadでネット上のニュースを覗き見していたら、中国のサイトに日本の若手政治家に関する興味深い論評を見つけた。今回はこの話を取り上げたい。
日本の若手政治家を警戒する中国!
「日本の若手政治家の台頭と誤判、その対中外交の軽率さ(日本政坛少壮派的崛起与误判 对华外交轻率鲁莽)」と題された11月8日付の論評は人民日報系の人民網が配信したもので、中国の各種サイトでも広く掲載されている。
元々は人民網日本語版に11月5日付で掲載された日本語バージョンが基になっているようだ。両者の論調は微妙に異なるものの、前原誠司外相など若手政治家の対中姿勢を厳しく批判する点ではほぼ共通している。
ちょっと長くなるが、ここで中国語版の要旨を簡単にご紹介したい。
●現在の若手政治家の代表は1950〜60年代生まれの民主党前原誠司、枝野幸男、原口一博、長島昭久、自民党安倍晋三、石破茂、石原伸晃などの国会議員である。
●彼らはいずれも日本の高度成長期に育ち、小泉政権時代に政治の表舞台で活動し始めた政治家であり、多くは40代で政府や党の要職を占め、内政外交の改革を強硬に主張する。
●自民党の若手が二世議員中心であるのに対し、民主党議員の場合は保守政治家の揺籃である松下政経塾の出身者が多い。
●彼らは政策通で弁舌も巧みだが、政治経験が不足するため、そそっかしく、うぬぼれが強く、軽率という一般的な弊害があり、難しい局面において往々にして判断と対策を誤る。
●彼らが台頭した背景には、下野した自民党内の世代交代や民主党の党内事情に加えて、日本の総合的な衰退局面の中で新しい人材と手法が求められていることがある。
●憲法改正、海外派兵、集団的自衛権行使、武器輸出三原則修正、中国脅威論などを唱える彼らの政治傾向と手法は中国にとって警戒に値する。
●彼らは常に対中言論を誹謗し、日中間の脆弱な国民感情を害し、世論の雰囲気を毒し、中日関係の基礎に損害を与える。
●彼らは国家利益に異常に固執し、中日関係の大局のための政策調整を拒絶し、局部的衝突発生の可能性を増大させた。
●台頭する若手政治家は衰退する日本を困難から救い出そうとする意図を持つが、彼らの無謀で軽率な対中外交を見ると、将来彼らが日本をどこに導いていくのか心配である。
あたかも、最近の日中関係の悪化はこれら若手政治家の経験不足で軽はずみな言動が原因だと言わんばかりの偏った主張だ。
いかにも中国らしい「自己中心的」なこの論評を読んでいて、中国の「日本専門家」の「公式論」には改めてガッカリしてしまった。
この小論に決定的に欠けているのは、過去十数年間、徐々にではあるが確実に強まっている中国側の「自己主張」を日本国民がいかに受け止めているかという分析だ。
やはり今の中国では、日本の若手政治家の言動が「民意」を反映しているという事実は書けないのかもしれない。
日本人が小泉純一郎(元首相)路線に拍手喝采したのは、日本人が反中になったからではなく、当時の江沢民政権の理不尽とも思える反日的言動に日本国民が大いに失望し、強い反発を覚えたからだ。
ナショナリズムに訴える当時の小泉首相の手法は、江沢民総書記が使った手法と基本的に同じなのである。
中国側の対応!
さらに、日本語版では、こうした若手政治家台頭につき中国がどう対応すべきかについても次のように述べている。これまた、実に興味深いので、ちょっと引用させてもらう。
●彼ら(若手政治家)の思想的基盤を理解し、将来出現する可能性のある政治家の中にある危険な思想と行動に対し、戦略的、技術的な面から、事前に準備しておかなければならない。
●また、こうした現実主義と付き合うことを意識し、情を説くことより道理を説くことを重視し、相手側と公式、非公式に数多く交流することが肝要だ。
●若手の『気負った』発言に対しては、あくまでも反撃し、相手側に中国は妥協する可能性があるとの幻想を抱かせてはならない。
●急進的な方法を採るなら両者とも傷を負い、日本はさらに傷つくことを彼らに意識させることが必要である。
●幼稚さから成熟へと、感情的な行動から理知的な対応へと脱皮することが、こうした若手が成長に向け避けて通れない道であり、中国が対日外交で正視しなければならない現実でもある。
中国側の戦術的失敗!
要するに、日本の「未熟」で「感情的」な若手政治家と十分交流し、極端な言動を控えるよう説得すべきだということなのだろう。
中国側だってかなり「未熟」で「感情的」だとは思うが、それはともかく、「日本の保守派との交流を深めよ」との指摘はその通りであり、全面的に同意する。しかし、真の問題は中国側が過去10年間こうした対応を怠ってきたことなのだ。
今さら昔の自慢話(?)をしても仕方ないとは思うが、筆者は10年ほど前北京に在勤していた頃、これと似たような考えを個人的意見として中国共産党の友人に伝えたことがある。
まだ小泉政権が全盛で、中国側は自民党の親中派議員を通じ、小泉首相を翻意させようと努力していた頃だ。
●中国は中国に理解のある「日中友好人士」とばかり付き合ってはだめだ。安倍晋三、前原誠司といった若手保守政治家の懐に飛び込んで、不愉快でも対話を深めなければならない。
●彼らは将来の日本のリーダーであり、中国の態度に失望している支持者の声を代弁している。中国が日中関係の重要性につき彼らを説得できない限り、日中関係は将来危うくなる。
これに対し、その友人は理解を示しながらも、素人が何を言うかとでも言わんばかりに、「それは難しい」「あなたは面白い話をする人だ」「そんなことを言う日本の外交官は初めてだ」などと言って真剣に取り合ってくれなかった。
あれから10年。中国側はその後も一貫して「日中友好人士」とのパイプに頼り続けた。筆者はこのことも、現在の日中間のコミュニケーション断絶を招いた一因だと考えている。
現在の日中関係の混乱は、日中間で真に対話すべき人々の間で対話が不足していたことの結果だ。
その意味では今回の中国側論評は一歩前進だと思う。今でも中国の日本専門家には優秀な人たちが多い。共産党上層部がもっと彼らの意見に耳を傾けることを望むばかりである。