毎日新聞 2011年2月22日 21時56分
経済産業省は22日、農業関係者向けファンドの設立などを盛り込んだ農業支援策を発表した。「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)交渉への参加のハードルを下げるため、国内農業の強化を図るのが狙い。
22日に経産省で開いた「農業産業化支援ワーキンググループ」(議長・松下忠洋副経産相)がとりまとめた。農業の経営基盤の強化や消費者と生産者の連携、利益が出る体質作りなど六つの柱を掲げる。
農林漁業者向け投資ファンド活用では、農林水産省と連携。農業法人などに資金提供して、経営基盤の強化を図る仕組みなどを検討する。また、「地域プロデューサー」を育成し、地域の農産物を使った食品の開発や販路開拓を進める。また、意思決定の際、社員全員の同意が必要な合同会社(LLC)も活用する。農家が自分の意思に反し農地を転売される懸念を減らすことで、農地集約を進めようというものだ。
経産省は、政府の「食と農林漁業の再生推進本部」(本部長・菅直人首相)が6月に策定する農業改革の基本方針に支援策を反映させる方針だ。
農水省は09年に改正したばかりの農地法の見直しや農協改革などに難色を示しており、他府省ペースで議論が一気に進むことには反発もある。経産省の支援策について篠原孝副農相は22日、記者団に対し「今日もどこかの役所が何か出すようだ」と述べるなど、不快感をにじませており、6月の方針策定へ向けて摩擦が高まる可能性もある。【増田博樹、行友弥】
◆経産省の農業支援策の主な内容◆
・農林漁業者向け投資ファンドを組成
・販路拡大に向けた「地域プロデューサー」育成
・農地集約の進展に向け合同会社の活用推進
・肥料や農業機械のコスト引き下げ
・日本貿易振興機構(ジェトロ)などを活用した輸出の促進
「農業産業化支援について-基本的考え方と方向性-」
のとりまとめについて
http://www.meti.go.jp/press/20110222005/20110222005.html
本日開催されました農業産業化支援ワーキンググループ(議長:松下経済産業副大臣)において、「農業産業化支援について」をとりまとめましたので、公表いたします。
1.背景
昨年11月に設置された「食と農林漁業の再生実現会議」(議長:総理大臣)においては、持続可能な力強い農業の確立等に向けて、「農林水産業の成長産業化のあり方」等について検討が行われているところです。
これを踏まえ、経済産業省では、農業の産業化について検討するため、昨年12月に「農業産業化支援ワーキンググループ(以下WG)」を設置しました。
これまで、4回にわたり経済団体等とともに、本課題について検討を行い、今般、関係者の議論に資するべく、考え方と方向性についてまとめました。
2.「農業産業化支援について-基本的考え方と方向性-」の概要
(1)農業産業化支援の基本的考え方
○農業産業化に向け、事業経営を支援する中小企業政策の活用を促進
○製造業などの技術や経営改善のノウハウを導入
○急拡大するアジア市場等への輸出拡大へ、輸出促進策を抜本的に強化
(2)農業産業化支援の方向性
①農業への「経営」の導入
○全国約3000の中小企業支援機関(商工会議所等)のネットワーク活用
○中小保険と農林水保険の連携等、公的信用補完制度による切れ目のない金融
支援
○農水省や関係機関とともに、事業強化のためのファンド出資を促進
②消費者と農業をつなげる
○地域をよく知る「地域プロデューサー」の育成・強化と組織化
○小売業(スーパー・百貨店・商店街等)との継続的マッチングの推進
③技術革新や「カイゼン」ノウハウ等を農業へ導入する
○ITを活用し、絶え間なく農業の生産性や収益の向上を図る
④生産現場で利益が出る体質を作る
○農地集約に資するよう合同会社(LLC)などの活用推進
○肥料や農業機械などのコスト引き下げ
⑤地域を世界につなげる
○国内生産から海外販売までを切れ目なくカバーする輸出促進策を実施する
(マーケティング支援、流通の高度化、輸出関連情報のワンストップ化、海外
リスクの低減、海外事業の障害除去、日本食のブランド化)
⑥産業界との連携・協力の強化
(3)制度環境の整備について
(本発表資料のお問い合わせ先)
地域経済産業グループ 地域経済産業政策課長 池森啓雄
担当者: 杉本、木村、佐々木
電 話:03-3501-1511(内線 2751~8)
03-3501-1697(直通)