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農薬:栽培期間中不使用自然栽培米 南魚沼産コシヒカリ　05.23　長野・栄村“奇跡”のワケは　震度６台３回で死者ゼロ

栄村大震災（長野県北部地震）

 

5月21日　産経新聞

新潟県との県境にある長野県栄村を最大震度６強の地震が襲ってから２カ月以上が経過した。日本有数の豪雪地帯にある村も雪が消え、被害の全容が明らかになったが、その大きさと比較して軽微だったのが人的被害。死者はゼロだった。村固有の事情が人的被害を抑えたとの声もある。

■自治意識
「地震後、消防団員が逃げ遅れている人がいないか一軒ごとに見て回った。お年寄りはそれぞれが車に乗せて、避難先の役場に連れて行ったよ」　家屋倒壊が多かった栄村の青倉集落の区長を務めていた島田哲（さとる）さん（６２）は当時の様子をこう語る。

人口約２３００人の村が地震に見舞われたのは、東北地方などを大津波が襲った翌日の３月１２日早朝。午前３時５９分に震度６強、４時３１分と５時４２分には震度６弱を記録した。　村によると、ほとんどの家屋は本震に耐えたという。豪雪地帯故に、構造が丈夫だったことに加え、震災当時は降雪が少なく、屋根に大量の雪が積もっていなかったことも幸いした。

しかし、続く２度の大きな余震で、多くの家屋が倒壊。最終的には全壊３３棟、半壊１５３棟を数えた。

本震で多くの住民が屋外に飛び出し、誰が外に出ていないのかすぐに分かったという。本震と余震の間にあったわずかな時間。この間に住民が協力して救助に当たったことが、被害を最小限に食い止めた。　迅速な対応ができた理由のひとつに、村独自の施策「実践的住民自治」が挙げられる。過疎地に合った自治を目指し、水田や道路整備などの事業に計画段階から住民が参加するもので、およそ２０年も前から続いている。

島田さんは「こうした取り組みで住民の自治意識が高かったことも、素早い救助につながったのだろう」と振り返った。

■忘れられてた？
震災から２５日たった４月６日。突然架かってきた電話に、役場に泊まり込みで対策を続けていた島田茂樹村長は驚いた。

電話の主は菅直人首相。電話の内容はというと、単なるお見舞いだった。

「お見舞い電話なら地震の当日でもよかったのに。東北が忙しくて、村のことを忘れていたのではないか」。島田村長は笑う。　こんな“冗談”が出るほど、村の被災状況が語られる機会は少なかった。しかし、支援の手はきちんと届いている。

これまでに村に寄せられた義援金は約５億円。年間の村税収入の２・５倍に匹敵する額で、村はすでに委員会を立ち上げて、配分額などを検討している。

最大で約１７００人の避難者がいたが、支援物資も震災発生当初から十分に届けられていたという。　「食べ物や毛布に困ったこともないし、本当にありがたい。この前は、大分の男性がマンゴーをたくさん持ってきてくれた。親切な人は本当に多い」

５月中旬まで役場で避難生活を続けていた桑原ソヨさん（９０）は感謝の気持ちを口にする。

仮設住宅の建設も順調に進む。５２世帯の申し込みに対して５５戸を建設する予定で、すでに５戸で入居が始まり、残りも６月中旬までに完成する予定だ。

支援が手厚かったのは、被災地がほぼ栄村だけだったため、長野県が動きやすかったからとみられる。

■それでも遠い復興
急場の対応は順調だったが、本格的な復興となると話は別。雪が消えるにつれ、水田の被害が明らかになった。

村によると、村の水田の総面積は約２３０ヘクタール。ひび割れや畦（あぜ）の崩壊などのために約１割で田植えができない恐れがあるという。

さらに、水田自体は無事でも、農業用水を川から引く取水口が壊れ、水がはれない田もある。　「１１月には雪が降る。早く刈り入れをするために、早く田植えをしたい」。水が張れずにいる農業、島田繁雄さん（８２）は、自宅車庫で耕運機の手入れをしながら、こうこぼした。

田植えのリミットは６月中旬。村だけでなく、農家自身も畦などを直しているが追いつかないという。良質のコシヒカリが収穫でき、稲作が村の経済を支えているだけに深刻だ。

また、一部の橋が地震でずれたため、通行止めになっている道路もあり早急な修理が必要。さらに、住宅も今後問題になりそう。

村の高齢化率は４５％超。家が全半壊した独居老人も多いが、高齢者が住宅を新築するのは難しい。集落単位の結びつきが強いため、高齢者が住む公設住宅を、それぞれが住んでいた集落につくる必要がある。

だが、村の財政だけで公設住宅を整備することは不可能。国や県の支援が必須だが、具体的な道筋はついていない。

５月５日には仙谷由人官房副長官が村を視察に訪れたが、具体的な支援策は示さなかったという。