ナトリウム・硫黄電池
6月13日 Web R25
原発事故の影響で実施された計画停電は、大きな混乱を招いた。この夏も電力不足が懸念されているが、いざというときでも安定的に電力を供給できる仕組みはないのだろうか? そんな中、耳に入ったのが従来の設備では不可能とされていた「大量の電力を貯蔵できるシステム」がメキシコで導入されたというニュース。
「それはNAS電池という、大容量の電力を充放電できる電池を使った仕組みです。天候により電力供給量が左右される太陽光発電など、自然エネルギーを使った発電設備に併設して使用されています。電力が余ったときに充電、足りないときに放電することで常に一定量の電力が供給できるのです」
とはNAS電池の開発を進める東京電力の広報部。NAS電池があれば、万が一の場合でも貯めこんだ電力を使って停電も防げるという。気になるその仕組みは?
「NAS電池のマイナス極にはナトリウム(Na)が、プラス極には硫黄(S)が、特殊セラミックスで仕切られて存在しています。NAS電池に電気を通すとナトリウムイオンが発生し、硫黄との化学反応により放電が起こります。充電する場合はその逆で、ナトリウムイオンの受け渡しにより放電、充電が行われるのです」(同)
NAS電池は自動車のバッテリーなどに使われる鉛電池と比べてエネルギー密度が約3倍高く、同じ電力を蓄電するのに必要な電池の体積は3分の1。発電所が蓄放電する上で求めるエネルギー効率や寿命などの条件もクリアしているんだそう。となると、早急な設置が期待されるが、今後の予定は?
「青森県にある二又風力発電所でNAS電池が設置されましたが、今後の利用拡大の障壁が設置コストです。導入拡大にあたり価格低下が進むことがのぞまれています」
東北電力も導入を検討しているNAS電池。電力不足を解決するためにも、早く普及してほしいものですね。
(冨手公嘉/verb)
(R25編集部)