2011/6/23 JCASTニュース
「人の噂も75日」とばかりに国会の70日延長、すなわち事実上、菅政権の当面の「延命」が決まった。民主党内では、菅首相が退陣論をものともせず、「自然エネルギー」「脱原発」を軸にさらなる延命を図るつもりでは、と戦々恐々とした空気も流れている。
菅首相は、「自然エネルギー」をキーワードに孫正義・ソフトバンク社長と急速に蜜月ぶりを見せ始めている。自然エネルギーの全量買い取りを義務付ける法案は、菅首相が急きょ「最重要」案件として掲げ、菅首相が退陣しないことを正当化する「錦の御旗」として急浮上した。菅首相の当面の「命綱」のひとつとも言えそうだ。
「その粘りで法案通して」とエール
菅首相が同法案への意気込みを強くアピールしたのは、2011年6月15日の会合でのことだ。菅首相の顔を見たくない、という人が国会に結構いるとして、「見たくないならこの法案を早く通した方がいい」と「菅降ろし」勢力を皮肉ってみせた。
会合で菅首相のこの発言を引き出したのは、自然エネルギー推進派の孫社長だ。「あと10年は(首相を)続けて」「その粘りで法案を通してほしい」とエールを送ったのだ。
これを受けた形で菅首相はマイクを握り、孫社長の話を聞きながら戦略を考えた、として例の「顔見たくないなら」発言をした。孫社長のエールに気をよくしてか、菅首相は
「本当に(私の顔を)見たくないのか。本当に見たくないのか。本当に見たくないのか」
と笑顔で3度も繰り返すなどノリノリの演説をみせ、発言の後には右拳を上へ突き上げるパフォーマンスも披露した。
従来の「首相退陣条件」は、第2次補正予算案と特例公債法案の可決を想定し、民主執行部と自民・公明幹部が話を詰めていたが、菅首相は、再生可能(自然)エネルギー特別措置法案も加えるようゴリ押しを始めた。
孫社長入閣の「サプライズ改造」説も
一方の孫社長は5月末、各地の休耕田などを利用し、大規模太陽光発電所(メガソーラー)を設置する方針を発表した。福島第1原発事故を受けて、短期間で考え出したものだという。発表会見には黒岩祐治・神奈川県知事ら複数の知事も参加した。同法案の成立は、菅首相だけでなく、孫社長にとっても命運を握る案件というわけだ。
70日の国会延長で8月末までの菅首相の「延命」はほぼ確定した、との見方が強まる中、「9月以降の延命」もささやかれている。民主党内では、菅首相が脱原発を掲げた「脱原発解散」を8月に行うのでは、といった見方も一部で出ている。
また、時期は不確定だが、孫社長を民間枠で、新設する自然エネルギー推進担当大臣として入閣させ、自然エネルギー推進を前面に出した改造内閣を発足させるのではないか、との憶測も流れている。
東日本大震災の復興基本法が成立したことを受け、菅首相は近く、復興担当相を任命する。小幅の内閣改造にとどまるとの見方が強いが、「サプライズ中規模改造」を警戒する声もある。