2011/7/20 JCASTニュース
「2013年問題」が若者の就職活動を直撃する――こんな懸念が指摘されている。2013年問題とは、年金をもらえる年齢が60歳より上がり、その関連で「定年」が延びることに伴って起きる事態のこと。若者の就活にどんな影響があるのだろうか。
「ただでさえ新卒者が厳しい就職環境下」におかれる中、「高齢者のみが優遇されるような政策」は、極めて問題がある――日本経団連は2011年7月19日、こんな指摘を含む提言を発表した。2013年問題を受けた政府の「65歳への定年延長、もしくは定年後の希望者全員再雇用」方針に異論を唱えたものだ。
年金受給年齢引き上げ受け、「定年延長」検討
2013年問題は、簡単に言うとこういうことだ。2013年から、年金(報酬比例部分)をもらえる年齢が60歳から65歳へ段階的に引き上げられる→定額部分の受給引き上げはすでに始まっているので、60歳で定年を迎えた人は、「給料も年金ももらえない」状態になる人が多く出てくる→60歳以降も働くことができるよう定年延長などを検討しよう――といった流れだ。
いまの法律では、60歳以降の再雇用について企業は「基準」を設けて選別できる。政府は、この「基準」をなくし、「再雇用希望者は全員、65歳まで雇う」、もしくは定年自体を65歳へ延長できないか、と準備を進めている。2010年の新成長経済戦略でも触れたほか、11年6月に出された厚生労働省研究会の報告書でも同様の指摘をまとめている。
直接関係がある「高齢者」の人は喜びそうな話だが、先の経団連提言は、若者の雇用への悪影響を心配している。ベテラン労働者らが60歳を超えて65歳まで会社にい続ければ、新卒者・若者採用を控える企業が続出するのではないか、というわけだ。
仮に高齢者の給料を減らして安くした上での再雇用だとしても、企業にとっては負担増になることに変わりはないので、その分は新卒採用を減らす、もしくはなくすことで調整しようとしても不思議ではない。
こうした心配は当然にも聞こえるが、政府はどう考えているのか。先の厚労省研究会の報告書では、「逆の例」をもちだして、暗に「心配ない、多分」といいたげだ。ヨーロッパで、「高齢者に早めに引退してもらう施策を進めたが、若者の失業解消に効果は見られなかった」と指摘している。だから、「定年の引き上げ・下げ」と「若者雇用」との間には、必ずしも相関関係はないということのようだ。
若者よ、NOを突きつけないと大変なことに
「若者の雇用・社会保障」などの著書がある龍谷大法学部の脇田滋教授(労働法)に話をきいた。
脇田教授は、「定年延長・再雇用拡大」と若者雇用の関係について、「当然、悪影響があります」と指摘した。
「2013年と若者雇用」問題は、若者の自立をそぐ、若者軽視のこれまでの「めちゃくちゃな」政策が積み重なった結果だという。それは、政治的に若者たちがおとなしく、意見表明をしなかったため、「政治家は若者が怖くなかった」ことも要因だ。
脇田教授は、若者たちへは、いかに今回の話を自分たちの問題だと自覚し、NOを突きつけないと大変なことになるかを知ることが大切だ、と呼びかけた。フランスでは最近でも高校生がデモに参加した例もあるとして、「いつまでも『政治的に無力』でいいはずがありません」と話した。
また、「かつての企業経営者らにはあった、若者を(甘やかすのではなく)大事に育てる発想を社会として取り戻さないと、日本は『滅ぶ道』まっしぐらです」と、政治や社会にも注文をつけた。
文部科学省などが7月1日に発表した2011年春の大学新卒者の就職率(4月1日現在)は、就職氷河期だった1999年度を0.1ポイント下回る91.0%で過去最低となった。