ケヴィン・メア
決断できない日本(文春新書) [新書] ケビン・メア (著)
2011/8/18 JCASTニュース
「沖縄の人はゆすりの名人」などと大学生への講義の中で発言したとして更迭されたケビン・メア前米国務省日本部長が2011年8月18日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、「報じられたようなことは発言していない」などと発言を否定した。メア氏発言を最初に報じた共同通信は「メア氏にも直接会って発言を確認した。正確な報道と確信している」と反論しているものの、メア氏は「全くない。ウソだよ」と再反論。両者の言い分は平行線をたどっている。
学生たちは記事を書いた記者の家に泊まっていた?
発端は11年3月6日に共同通信が報じた記事。10年12月3日にメア氏が米ワシントンにあるアメリカン大学の学生ら14人に対して講義した中で、問題の発言があったとされている。記事が配信された後、メア氏は国務省の上司から反論することを許されず、そのまま日本部長を更迭されたという。
講義は、大学生が東京と沖縄に研修旅行に出かけるのを前に、大学側の要請で行われたもの。研修旅行は、講義から2週間後の12月下旬に行われた。
記事は、11年2月中旬に複数の学生が作成したメモが根拠になっている。メア氏によると、研修旅行の一団は、その様子を細かくブログに記録していた(すでに削除)。ブログの内容などをもとに、メア氏は記事について大きく3つの問題点を指摘した。
1点目が、研修旅行が「反基地活動」色を帯びていたということだ。例えばブログには、辺野古沖に建設が予定されている滑走路について
「この計画の問題のひとつが、絶滅の危険がある海の生き物の存在を脅かすかも知れないということだ。私たちは、フェンスにかかげる横断幕を何枚か作った。だが、数日後には米兵が燃やしてしまうだろうと聞いた」
とある。また、ヘリパッド建設に対する抗議活動の現場を訪れて
「この旅行で一番思い出深い部分のひとつ」
ともつづられている。
2点目が、取材対象と記者との距離感。ブログによると、研修旅行の一団は、沖縄に行く前後の2回にわたって、記事を書いた共同通信記者の自宅に宿泊している。また、この記者は、11年5月に沖縄国際大学(沖縄県宜野湾市)で行った講演で、「軍事力が抑止力になるという発想を捨てるべき」などと発言。「反基地」色を鮮明にしている。
3点目が、記事の根拠になったメモが、講義から2か月半も経った2月中旬に作成されたという点だ。メア氏は、
「そのようなものが正確なわけがないし、バイアスもかかる」
と主張。共同通信に対しては、記事が作成された経緯を調査し、記事の訂正・削除を要求している。
共同通信は「正確な報道と確信」
メア氏は一連の経緯を記した著書『決断できない日本』(文春新書)の出版を記念して、8月17日にも文芸春秋社で会見している。これを受け、共同通信も川原仁志編集局次長名で
「メア氏の講義を聞いたアメリカン大学の複数の学生、准教授がこの発言の事実を明らかにしており、メア氏にも直接会って発言を確認した。正確な報道と確信している。取材方法についても倫理上の問題はないと考えている」
とする談話を発表、反論している。
だが、メア氏は共同通信の談話については
「確認しているわけはない。全くない。ウソだよ」
と、「直接会って発言を確認した」のくだりを否定。メア氏によると、2月中旬に、発言内容の確認を求めるメールが送られてきたので、メア氏は「メモは正確でも完全なものでもない。自分が行った講義のメモではなく、学生が書いたものだ」などと返答。これは対面による確認取材ではなく、メモの内容が正しいと認めたわけでもないとしている。