柏崎刈羽原子力発電所
2011年9月3日 ゲンダイネット
「津波対応はやれるところからです」???
8月下旬、構内見学を再開している柏崎刈羽原発に行ってきた。3・11以降、原発安全神話は完全に崩れ去った。それなのに、原発の安全性をPRする「構内見学」はシャーシャーと復活している。一体、何をPRするのか。どういう神経で「再開」するのか。こうした疑問を持ったのだ。
「構内見学は5月20日に再開しました。我が社のPR施設は今ここだけです。渋谷の電力館など必要でないものは売却し補償に回しています。今までみたいなPRはもちろんできません。福島、そして柏崎は大丈夫なのか。そのあたりのことをお伝えすることが我々の仕事だと認識しています」
こう言うのは、我々を案内してくれた遠藤清サービスホール副館長(54)だ。3期も務めた元市議である。ちなみに柏崎刈羽原発は新潟の田中角栄邸から約5キロしか離れていない。ここで福島級の事故が起これば、角栄邸もアウトである。
敷地は127万坪。正門から海までは1.4キロ。構内の海岸線の長さは3.2キロに達する。施設内には東電の社員が1200人、協力企業(720社)の社員6000人が働いている。発電機は7号機まであり、1~4号機が柏崎市、5~7号機が刈羽村側にある。柏崎刈羽原発と呼ぶのはそのためだ。
さて、安全性はどうなのか。驚いたことに中越沖地震後の耐震工事と津波対策が今なお、同時進行で行われていた。2007年の中越沖地震で7つある原子炉の全てが止まった。ところが、耐震工事を施し、国の検査を経て再稼働にこぎつけた。現在は5、6号機が動いている。これは驚くべきことだ。津波対策は福島の事故があったから始めたもので、まだ緒についたばかりなのだ。
「福島級の津波が来ても大丈夫なように高さ15メートルの防潮堤の建設を予定しています。津波で倒れたら大変なので相当基礎をしっかりしないといけません。その関係で地盤調査を念入りにやっています。また建屋の開口部に水が入らないように防潮壁を設けているところです。これについてはすでに工事は始まっています」
福島でも活躍した電源車、発電車、消防車が集まっている一角が高台に設けられていたが、タイヤはすべて普通タイヤ。3・11以後、各地からかき集めて配備したようでナンバーは多摩、練馬、八王子、野田とまちまちだ。
「いざというとき使えるように避難訓練をしています。3、4回実施したでしょうか。1回は夜間でした。冬には雪中訓練をする予定です」
津波が来ても本当に大丈夫なのだろうか。
「防潮堤がすぐに完成するわけではありません。完成までの間に津波に襲われないという確証はありません。また電源車などのタイヤをオフロード仕様のものにするところまで準備はできていません。とりあえずやれるところから対策をとるしかありません」
運を天に任せるぐらいなら、原発をやめればいい。
(ルポライター・西牟田靖)