2011年9月8日 ゲンダイネット
高額報酬の9億円、ムダな宣伝費269億円、料金踏み倒し補填21億円まで原価に計上?
どの面下げて「値上げ」ができるのか。東電が電気料金を15%程度引き上げようとして大ヒンシュクだ。停止中の原発の代わりに火力発電を増やすため、「火力の燃料費負担が収益を圧迫する」というのが値上げの理由だが、冗談じゃない。東電には燃料費“水増し”疑惑が浮上している。
東電の経営状況を調査する政府の「経営・財務調査委員会」によると、98年以降の料金コストのうち、燃料費などの予測値が実績値を恒常的に上回っていたのだ。
「原油相場や為替レートの変動で燃料調達費が左右することをいいことに、常に予測値を水増し。過剰に料金をつり上げてきた疑いがあります」(政府関係者)
こんなインチキが許されるのも、東電が奇怪な料金システムに守られているからだ。日本の電気料金は「総括原価方式」といって、必要なコストを積み上げ、そこに「適正な事業報酬」として3%を自動的に上乗せして決まる。
「普通の会社は売り上げからコストを差し引いた後に利益が確定します。利益を出すにはコストを削らなくてはいけない。電力会社は真逆の発想で、コストを増やせば増やすほど高い電気代を徴収できる。巨額な原発が乱立したのも、そのためです」(経産省関係者)
経営原理を無視した“ぼったくりシステム”がまかり通った結果、日本の家庭は米国の2.5倍、世界一高い電気料金を払わされているのだ。
しかもコストには何でもかんでも計上できる。経営・財務調査委員長の下河辺和彦弁護士(元産業再生機構顧問)が「こんなものまで原価に計上すべきか」と驚愕(きょうがく)したほどだ。
東電の電気料金の算出基準となる「電気事業営業費用明細表」(10年度)を見ると、年収7200万円と高額批判を浴びた勝俣恒久会長はもちろん、「全役員の報酬」8億6500万円のほか、全社員の「給料手当」約3000億円を計上。原発安全神話の宣伝やPR施設の運営に消えた「普及開発関係費」は269億円といった具合だ。
「こんなデタラメ料金、二度と払うか!」と言いたくなるが、コストには「電気料貸倒損」といって、不払い分の電気料金の補填費用が21億円も計上されている。
総額約1兆5000億円と、コスト全体の3割に上る燃料費の水増し分をキチッと精査し、高額給与やムダな宣伝費をカットすれば、値上げどころか、アッという間に15%の値下げだって可能である。