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農薬:栽培期間中不使用自然栽培米 南魚沼産コシヒカリ 09.21 ソフトバンクが極秘裏に進める「アジアグリッド構想」という奇貨?

アセア・ブラウン・ボベリ (ABB)

2011年9月12日  DIAMOND online

ソフトバンクが日韓露を海底送電網でつなぐ「アジアグリッド構想」を極秘裏に検討していることが、週刊ダイヤモンドの取材でわかった。想定する事業予算の合計は約1兆円。その背後には日本の高コスト体質を見透かした外資系メーカーの存在がある。実現への壁は高いが、電力改革のきっかけになるかもしれない。

ソフトバンクの孫正義社長の元には今、外資系の総合電機メーカーや太陽光パネルメーカーがひっきりなしに訪れ、商談に汗をかいている。あたかも“孫詣で”といった現象が起きている。
ソフトバンクの参入した大規模太陽光発電(メガソーラー)事業に絡み、必死に売り込んでいるだけではない。さらに大きな事業への参画をにらんでいるのだ。

じつは、ソフトバンクは世間をあっと驚かせる新構想を極秘裏に検討している。

東アジア全体を送電網でぐるりとつなぎ、互いに電力を融通し合う「アジアグリッド構想」がそれだ。電力不足の解消策として、孫社長が本誌の取材に対して 明らかにしたものである。

この構想の概要はこうだ。

南は九州と韓国とを結び、北は北海道とロシアとを送電網でつなぐ。海には直流高圧の海底ケーブルを垂らし、陸はモンゴルやチベットまで延ばしてしまう。 国家間で電力を融通し合うのだ。

右図に示すように、日本の産業用電気料金は韓国の2.7倍と高い。ロシアに至っては3.3倍だ。日本は電力を輸入することで電気料金を安くできるという。

孫社長は「今は、中国やモンゴル、ロシアなどの資源国から、天然ガスや石油を船で運び、高い土地代と高い人件費をかけて発電用のタービンを回している。現地で電気に加工してもらい、そのまま持ってくればよい」と話す。

加えて「海底ケーブルを敷くのに南北両方足しても1兆円ちょっとですむ。40年間で見れば、年間二百数十億円で、価格が半分から3分の1の電気が手に入る」(孫社長)のだ。

にわかには信じがたいが、これは孫社長得意の“大ボラ”なのか。

じつは日本には北海道と本州を結ぶ北本連系線などの海底送電網がすでにある。九州電力も佐賀県唐津市と長崎県の壱岐島までを結ぶ事業計画の調査検討を始めている。「技術的には朝鮮半島までつなぐのは可能。計画は検討に値する」(日系大手電力インフラメーカー幹部)ともいわれる。

風力や太陽光などの再生可能エネルギーを扱うには、ITを利用したスマートグリッド(次世代送電網)が欠かせない。電力参入を果たしたソフトバンクが送電網を扱うビジネスに入ってもおかしくはないのだ。

しかし、孫社長がこの構想実現に奮い立つきっかけをつくった存在がいる。それが日本でのインフラ事業参入を狙う外資系メーカーなのだ。

地球儀に線を引大手外資メーカーの狙い?

「日本に国際送電網を売り込むチャンスがあるか、シミュレーションしてほしい」

まるで“地球儀に線を引く”かのごとく世界中で巨大送電網を手がけてきた、エンジニアリング世界大手のABB(本拠地スイス)の日本法人に今年3月下旬、一つの指令が下った。それが中国、韓国、モンゴルなどアジアを結ぶグリッドラインであり、同社流の日本の電力不足の解決策だ。

そのシミュレーション内容はダイナミックである。日本側の“玄関口”は九州電力の玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)付近。漁業補償などがすんでいる原発周辺海域をケーブルの引き揚げ場所に、韓国まで約230キロメートルを結ぶ。

さらに中国の北京、モンゴル(1800キロメートル)、チベット(2300キロメートル)を含む8地点とつなげることを想定する。使用するのは長距離送電のロスが低く、同社が世界トップシェアの40%以上を押さえる「高電圧直流給電(HVDC)」のケーブルだ。

すでに政府筋にも「やろうと思えば3ヵ月で海底ケーブルは敷ける」(ABB関係者)と説明。過去20年だけでも世界の50ヵ所近いHVDCプロジェクトを手がけ、ノルウェー─オランダ間や、フィンランド─エストニア間など、多国間を海底ケーブルでつないだ実績も数多い。

しかし、前例のない話に電力関係者は首を縦に振らなかったという。そこで、パートナーとして浮上したのが電力事業について活発に発言するソフトバンクだった。

ソフトバンクが核となり、同じく接触をしていた米ゼネラル・エレクトリックなど複数社と進めてきた極秘裏のプロジェクトが、冒頭のアジアグリッド構想なのだ。

アジアの電力を安く輸入し、電力不足を解消する──ソフトバンクの狙うビジネスは、欧米の外資系メーカーと表裏一体、共存共栄の関係にある。

ソフトバンクにとっても、グローバルな実績に加えて、「従来の国産のインフラメーカーよりもかなり価格が安い」(ソフトバンク関係者)という外資系インフラメーカーの存在は魅力的に映る。

これまで日本の電力会社は品質管理などのためにJIS(日本工業規格)など、独自規格に合わせて造った国産メーカーの電力インフラを採用してきた。それは「テーラーメードの紳士服を買っていたようなもの。だが3・11以降、これからは“ユニクロ”でいいじゃないかという話が加速するはずだ」(経済産業省幹部)。

ここでいう“ユニクロ”こそ、世界的に標準化した製品を持つ外資系インフラメーカーである。これまでは参入障壁によってメインプレーヤーとなれなかった外資系メーカーの商材を“テコ”に、孫社長は新しい電力事業のビジネスモデルを模索しているのだ。

実現可能性は低いものの電力改革に一石投じる

9月12日、孫社長が私財10億円を投じた「自然エネルギー財団」の設立イベントが開かれる。海外エネルギー関係者を集めた場で、孫社長はアジアグリッド構想を華々しく発表する……はずだった。

この構想を本気で検討してきたソフトバンクはすでに壁にぶち当たっている。それも無理はない。

なにより電力を輸入する主体の電力会社に全然乗る気がない。東京電力の西澤俊夫社長は「コストや技術より安全保障を基本に考えなければいけない」とにべもない。

安全保障の観点はもちろんのこと、隣国の事情もある。韓国は政策的に電気料金を安くしてきたため、電力会社が赤字続きだ。同じ値段で電力を輸出するわけがない。

漁業補償や既設の送電網の強化も必要で、一企業が進めるのはいくらなんでもむちゃなのだ。

しかしながら、この構想の議論自体を否定すべきものではない。

今後、原子力発電所の停止と損害賠償負担により、日本の電気料金の値上がりは避けられない。
それでも電力会社の高い設備投資を許し、高い電気料金を支払い続けるのか。それよりもこれを機に高コスト体質を見直し電力改革を大いに議論すべきだろう。

そんな状況のなか、孫社長は改革の旗手となるか、道化師で終わるのか。今、ソフトバンクは無難な「政策提言」へと向きを変えた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、小島健志、後藤直義)

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