自然エネルギー協議会
2011年10月6日 ゲンダイネット
地元は早くも経済効果を期待しているが…<どこまで本気?>
「声はすれども姿は見えず」ではないが、ソフトバンク孫正義社長が唱える自然エネルギープロジェクトの実態がさっぱり見えてこない。
孫は7月に太陽光発電事業をぶち上げて全国の自治体をその気にさせた。とりわけ北海道は発電事業の最前線で、「帯広と苫小牧に太陽光発電の実験プラントを建設する」「稚内から増毛海岸までの日本海側に風力発電施設群を建設する」などの構想を明らかにしている。
太陽光に関しては年内に実験を開始するということだが、実はほとんど進んでいない。帯広市に問い合わせたところ、10月1日に3000平方メートルの土地を貸すことで契約はしたが、まだ工事に着手していないとのこと。同市は「11月に入ると地面が凍結することもあるので、基礎工事だけでも進めたほうがいいのですが」と心配げだ。ちなみに土地の賃借料は半年で、たったの54万9000円である。また、ソフトバンクは当初1000キロワット程度を想定した電力発生量を、9月になって100キロワットに下方修正した。
稚内では、今後11の自治体と勉強会を立ち上げるというが、勉強会を開くメドは立っていないようだ。そのくせソフトバンクは膨大な数字を打ち出している。なんと500万キロワット級の発電能力を持つ風力発電施設を建設するという。稚内市内には現在、74基の風力発電塔があるが、1基あたりの電力発生量は約1000キロワットにすぎない。500万キロワットを産出するには5000基が必要になる計算だ。
地元関係者が言う。
「一連のプロジェクトがソフトバンク主導のため、どの自治体も費用は1円も出していませんが、市民は経済効果を期待しています。帯広の施設の建設費は5000万円に上るとみられている。実験が成功し、大規模施設の建設となれば、地元の土建業者などはバンバンザイですからね」
だが、実験スタートはまだ先の話だ。ソフトバンクに問い合わせたところ、「帯広も苫小牧も有力な候補地なのは事実ですが、正式に発電事業を発表したわけではないし、工事の具体的なスケジュールも決まっていません。施設の建設費用は非公表です」(広報部)との回答だった。
孫がカネと太鼓を叩いてあおったプロジェクトはどうなるのか。ソフトバンクに詳しいジャーナリストの児玉博氏はこう分析する。
「自然エネルギーがカネと時間がかかり、成功が難しいことは孫さんも知っているはずです。それでも“太陽光だ、風力だ”とアピールするのは常に世間の注目を浴びるためのアドバルーンみたいなもの。孫さんならではのテクニックです。むしろ孫さんの本当の目的は送電網でしょう。将来、発送電が分離したとき、送電の権利を得るためにいち早く名乗りを上げたかったのだと思います」