TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)
2011年10月12日 ゲンダイネット
そんなに前のめりでTPPに参加したいなら、ハワイに続く51番目の州としてアメリカ合衆国の一員となったら宜(よろ)しいのです。3億1千万人の国家に1億2千万人の日本が加わったなら、“内なる抑止力”として発言力も増します。唯我独尊で傍若無人な“天動説”的振る舞いに眉を寄せる国際社会から、ニッポン州は拍手喝采の栄に浴するでしょう。
「高い失業率を受け再選が危ぶまれる選挙情勢に焦燥感を募らせており、反動のように日本政府に対する要求のトーンを強めている」と昨日配信記事で「共同通信」が看破したバラク・オバマ政権が強要するTPPは、早い話が英連邦ならぬ米連邦の企てなのです。
太平洋に面するカナダもメキシコも中国も韓国も台湾もインドネシアもフィリピンもタイもロシアも不参加。況(いわ)んや遠く離れたインドもブラジルもEU諸国も不参加。羊頭狗肉な環太平洋戦略的経済連携協定です。
「国外に10億ドル輸出拡大する度に国内に5千人の雇用が確保される」と今後5年間でアメリカからの輸出を倍増させる「国家輸出戦略」を打ち出した昨年、横浜で開催のAPECでオバマ氏は「アメリカに輸出さえすれば経済的に繁栄出来ると考えるべきではない」と他国に釘を刺しました。自由貿易ならぬブロック経済化を進めるアメリカの為の時代錯誤な「保護貿易」がTPPです。
2年前に開港150周年を迎えた横浜が物語るが如く、通商立国の日本は既に開国済み。至らぬ点を改国するならいざ知らず、国家の根幹たる関税自主権を放棄して医療も電波も公共入札も全てを非関税障壁という美辞麗句の下に不平等条約化するTPPは壊国に他なりません。農業の話ではないのです。
「TPPに関する私の立場は判っているよな」と9月21日、宰相NODAは日米首脳会談で“恫喝”されました。「暴力団排除条例」に抵触し兼ねぬ物言いです。取り敢えずは参加表明だけでも、と日本的なあなあでTPPなる「賭け麻雀」に加わって、想像していたレートと違った、と途中で降りられると思っていたら大間違い。
にも拘らず昨日、「アジア太平洋の40億人を日本の内需と考え、外に目を開いてTPPで打って出ないと、子供や孫達に豊かさを引き継げない」と玄葉光一郎外務大臣は宣(のたま)いました。中国も韓国も台湾もインドネシアも横を向くブロック経済に前のめりな思考回路をMRI=核磁気共鳴画像法で精密検査したい衝動に駆られます。
【田中康夫】