2011.11.15 zakzak
野田佳彦首相が求められている「TPP」「普天間」「消費増税」の政策決断のうちの1つをクリアした。11月11日夜の記者会見で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加を正式に表明した。
残るのは、昨年5月に日米両政府が合意した普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設問題と、来年3月通常国会提出・6月成立を公言する消費増税準備法案である。
野田首相には「ツキ」があるのかもしれない。
ハワイで11月13-14日に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の議長を務めるオバマ米大統領は、19日にインドネシアのバリ島で開かれる東アジア・サミット(東南アジア諸国連合+日中韓3カ国)に出席する。
そして、同大統領はその直前の16日に、オーストラリアを訪問する。未公表だが首都キャンベラで米国の新アジア太平洋軍事戦略を発表するというのだ。
米軍のイラクからの全面撤退に続き、陸軍部隊のアフガニスタンから年内撤退を前提とした同戦略には、米海兵隊再編を含む東アジア国防計画が盛り込まれているとされる。これが事実だとすれば、普天間飛行場も辺野古移設合意にも影響する。
新戦略の根っこには、国防予算の大幅削減というオバマ政権の至上命題がある。CIA長官時代から「バジェット・カッター」の異名を取るレオン・パネッタ国防長官が、オバマ大統領の信任厚い、新任のM・リッパート国防次官補(アジア太平洋担当)に与えた特別ミッションが新国防計画の策定である。
米海兵隊の唯一の海外基地が普天間飛行場である。嘉手納空軍基地との統合案を打ち出し、物議を醸したウエッブ上院軍事委員長の持論は沖縄駐屯海兵隊の大幅削減=グアム、そしてハワイとカリフォルニアへの移転である。だが、移転には莫大な費用がかかる。
そこで浮上したのが、オーストラリア空軍基地を恒常的に米海兵隊がローテーションで使用することと、沖縄駐留の第5海兵団を「分散移転」する案である。移転先として、航空自衛隊の新田原基地、海上自衛隊の佐世保基地が候補にあがっている。訓練場としては、鹿児島県の馬毛島、沖縄県の下地島などが有力視されている。
普天間移設の肝は、事故リスク分散である。沖縄県民がこぞって反対する辺野古移設は回避される。野田首相の「ツキ」とは、このことである。(ジャーナリスト・歳川隆雄)