ご当地グルメを観光に結びつけようと、南魚沼市近隣で「A級」「B級」二つのプロジェクトが同時進行している。魚沼地域や長野、群馬の3県7市町村でつくる雪国観光圏は「雪国A級グルメ」の認定を昨年から始め、地元食材を使った無添加の料理を追求。一方、市や商店街のグループは、安価で手軽な伝統食に着目し、B級グルメの祭典への参加をめざす。
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「伝統野菜をメニューに取り入れている?」「調味料の原材料産地や添加物の有無は?」。雪国A級グルメのエントリーシートに...は、細目を除いてもざっと34の質問が並ぶ。微に入り細にわたる問いに、昨年は申し込んだ約50店の半分が脱落した。
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この認定制度は一昨年12月、南魚沼市大月で食の情報誌「自遊人」をつくる岩佐十良編集長(44)が、雪国観光圏の集まりで提案してスタートした。岩佐さんは「B級グルメの主な材料は小麦粉。ブームがいきすぎると、廉価な輸入食材に頼る事態を招きかねず、地場産の食材が見失われてしまう」と、危機感を抱いていた。
条件は五つ。原材料すべての産地や製造元などの情報が公開できることや、地場の食材を積極的に使っていることなどだ。クリアした観光圏内の飲食店や旅館には、「A級」を認定することにした。現地調査や観光圏担当者らの審査を経て、三つ星を最高とするランク付けがなされる。昨年3月に12店が「星」を獲得した。
三つ星を得た旅館「HATAGO井仙」(湯沢町)は認定前まで使っていた大手メーカー製の酢やみりんを、県内産の無添加製品に切り替えた。調味料の仕入れ値は前年比で5~6%上がったが、旅館のマーケティングマネジャー小野塚敏之さん(34)は「A級のブランドをもつ店が一つあることで、周りの飲食店や業者は、食材を取り扱うことの意識をより高める。観光にも波及効果があるはず」と期待する。
近く、第2期認定店が発表予定だ。岩佐さんは「食の安全がますます問われる中、客のメリットを第一に考える制度になれば」。
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南魚沼市はB級ご当地グルメとして昨秋来、納豆と刻んだ漬物をご飯にかけた「きりざい(切り菜)丼」を売り出している。市内約10店舗が提供するほか、各地の食イベントなどで2千食以上を販売した。
市は、食を生かしたまちづくりを約3年間、試行錯誤してきた。当初は、地元生誕の戦国武将・直江兼続を主人公にした大河ドラマの放映(2009年)に合わせ、「戦国カレー」を発案。あらゆる世代の口に合うグルメ開発のつもりだったが、B級グルメの祭典「B-1グランプリ」の関係者から、「地元に根ざした『物語性』がない」と辛口の評価を受け、方針転換。伝統的な賄い食のきりざい丼に目を付けた。
PRする市や商店街のグループの当面の目標は、B-1の主催団体に名を連ねること。リーダーで市内の会社社長阿部康弘さん(41)は「高校球児が甲子園をめざすようなもの。市の知名度は間違いなく上がる」という。
1杯300円ほどの価格の安さと手軽さが売り。納豆や漬物の産地にはこだわらないが、ご飯は魚沼産コシヒカリ限定だ。阿部さんは「ランチにきりざい丼を食べた観光客が、夜は雪国A級グルメを楽しむ。そんな連携ができるといい」と話している。2012年01月18日 asahi.com(服部誠一)
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