超人気の塩麹 1キロ4000円もある贈答用味噌並の高額商品に
「塩麹」が降って湧いたような人気になっている。万能調味料としてスーパーでは売れ筋で、ネット通販では売り切れもあり、価格帯も高めという。だが、実はちょっとした工夫で塩麹が家庭でも作れてしまうのだ。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏が解説する。
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もはやブームを超えた人気を獲得している塩麹。最近、全国各地で県産品として発売ラッシュという摩訶不思議な状態が続いている。今年に入ってから、福井県、山形県...、青森県、神奈川県、石川県、兵庫県などの地元紙で、「地域の食」にまつわるニュースとして取り上げられた。今年のバレンタイン直前には、人気レシピサイト「COOKPAD」のキーワードランキング上位をチョコレートが席巻する中、唯一バレンタイン関連以外でベスト5入りを果たし、ネットの一部で話題になった。
塩麹に含まれる酵素が、デンプンやタンパク質に働きかけて食材をやわらかくしたり、「旨味」のグルタミン酸を生成するなど、その使い勝手はまさに「万能調味料」といったところ。ところがこの塩麹、過熱気味の人気のせいか、思いのほかサイフにやさしくない。
都内の路面店で価格帯を調べてみると、398円/140g(大手スーパーI・瓶詰め)、420円/150g (K百貨店・瓶詰め)、198円/250g(スーパーY・パック)、268円/160g(スーパーS・カップ)といったところ。ネット通販でも品切れが多く、525円/120g(ネット通販A・瓶詰め)という1kgあたり4000円を超えるものもあった。
調査した8店舗中、もっとも割安だったのが、1kgあたりに換算すると792円という、玄米入りのもので、他は1kg換算で1680~4375円と、贈答用の味噌並の高額商品となってしまっている。ボリュームゾーンが2000円台/kgとなると普段使いにはちょっと……。
といっても「塩麹」は高額な既製品を買わなくても、自宅で簡単に作ることができる。ビンなどの保存容器に、乾燥麹と塩、水を混ぜて、置いておくだけ。あとは1日1回かき混ぜれば、1~2週間ほどでできあがる。最近では、乾燥麹も値上がり傾向にあるが、それでも1kgほどの塩麹なら、せいぜい600~700円もあれば作ることができる。
水と塩の代わりに、しょう油を注げば「しょう油麹」という、まだほとんど市販されていない、さらに味わい深い調味料を作ることもできてしまう。
去年の震災後、スーパーの棚の偏った欠品状況に、「日保ちしないパンに殺到しなくても、栄養満点の板麹が棚に大量に残ってるのに……」というような原稿を、あるニュースサイトに書いたことがある。そして現在の塩麹の人気を見るにつけ、地方発のアイドルとして上京し、10年長い下積みの末、大ブレイクしたあのユニットを思い出す。
時間をかけて積み重ねられた味わいがあるからこそ、一過性のブームでは終わらない。その奥深さと腰の強さ、そして長く応援してきたファンのあたたかさが、ブームを文化に熟成させる。
http://www.news-postseven.com/archives/20120317_95824.html