日本の伝統的な調味料、塩こうじの人気が高まっている。原材料はこうじと塩と水だけ。肉や魚などの食材を一晩漬け込めば軟らかくなり、うまみも増すと評判だ。塩の代用のほか、ソースの隠し味としてハンバーガーに使われるなど利用の場を広げている。地方のこうじ店から火が付いたとされるブームに今春から大手みそメーカーも参入。競争が激しくなってきた。
大分県佐伯市にある「糀屋本店」は320年を超える歴史を持つ老舗こうじ店だ。こうじの販路を広げようと、江戸時代の文献を参考にして2007年に塩こうじを商品化した。250グラムの瓶入りが1000円などで、通信販売もしている。現在は届くまでに1~2週間待ちという。
人気の火付け役といわれ「こうじ屋ウーマン」を自称する同店の浅利妙峰さんは「塩こうじは体に優しい。世界の人のおなかを元気にしたい」とし、米国やイタリアなどで講習会を開く予定だ。
大手みそメーカーのハナマルキ(長野県伊那市)は4月中旬から塩こうじの発売に踏み切った。みそ造りにこうじを使うため、参入への下地はあった。初年度の売り上げは3億円を見込んでおり、「『塩こうじならハナマルキ』と呼ばれる商品にしたい」(広報)と意気込む。
マルコメ(長野市)も5月下旬から「プラス糀 生塩糀」を発売。他のこうじ関連商品と合わせ年間10億円以上の売り上げを目指す。
モスフードサービスは塩こうじをソースに使ったハンバーガー「塩糀バーガー雅」を5月24日から全国のモスバーガーで発売した。塩こうじの素材の味を引き立てる作用を応用した。100万食の限定販売で「女性を中心に売れ行きは好調。店舗によっては売り切れたところもある」(広報担当者)としている。居酒屋などの飲食店でも焼き鳥や焼き魚、ギョーザなどに塩こうじを使ったメニューが登場している。
レシピ本も急増中だ。ブックファースト新宿店(東京都新宿区)は、3月から塩こうじを使うレシピ本を集めた棚を設けている。現在扱っている塩こうじ関連の書籍は30点を超えており、新刊が続く予定もある。
料理研究家の濱田美里さんは「塩の代わりになって、しかもヘルシー。余った野菜やお肉にまぶせば、日持ちがする上においしくなる。古くて新しい調味料だ」と話している。
古くて新しい調味料。ブームも長持ちしそうだ。